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VOICE Vol.8 株式会社井上商店

認定事業者インタビュー VICE

インタビュー企画第8弾。今回は高鍋町で事業を営む株式会社井上商店さんです。廃品回収から始められ、優良認定を受けるまでになった道のりを含め、どういった想いがあったのでしょう。

vol.7 株式会社井上商店 代表取締役 井上博功
 

ゼロエミッションを掲げて

今回の井上商店さんのインタビューは、代表取締役の井上博功さんです。高鍋町でリサイクル事業を営まれている井上商店さんの事業内容と、異業種の経歴をお持ちの社長ご自身についても伺い、どういった視点でこの優良認定制度をご覧になっているのかお話を頂きました。

「井上商店は、先代が昭和32年に創業した鉄スクラップ、昔は廃品回収業ですね。戦後間もなく、リアカーを引いて物を集めていたわけです。産廃業と一口に言いましても、お金を頂いて物を処分する事業と、資源となる廃品を買い取り、再度利用できる様にした形でまた売るというリサイクル事業があるわけです。我々は後者が主体でして、始まりは申し上げたように金属ですね。事業が軌道に乗ってくると、色んなご要望を頂きます。断っていてはお客様は減ってしまうので、そういったご要望にお応えするうち、自動車リサイクル法や家電リサイクル法などが出来てきて、それに沿う様にやっていく中で、金属やプラスチックなど色んな物をリサイクル出来る施設が出来上がっていったんですよね」

リサイクル事業を主とされているため、役目を終えたものを再び資源の循環サイクルの中に戻すという意識が強い井上商店さん。優良認定制度に対する視点も、他の事業者さんとは少し違ったものになるとのこと。視点は違えど、持続的な環境を目指す姿勢は共通するようです。

「全てのものをリサイクルするということは難しいことですけど、 井上商店は現在、『ゼロエミッション』を掲げて今に至ります。ですので、この優良認定制度自体の認識もそうですが、『資源に還そう』という想いの、ウェイトの置き方も違ってくるんじゃないでしょうかね」

 

認定取得のきっかけは取引先

更に、井上社長は異業種からの経歴をお持ちということで、その人柄をお伝えする上でも、これらについて触れていきたいと思います。

「私は東京で一級建築士としてマンション設計などやっていたんですが、29歳の時にこの井上商店を継ぐために宮崎に帰ってきて、ここの仕事終わりにボランティアで設計をやったりしていたんですよ。そしたらなんか噂が拡がっちゃって(笑)ちゃんと登録をして、必要経費なんかは頂かないといけないということで、そこから設計事務所として登録も済ませ、この事業と並行して営んでおりました。13年ほど前に先代がなくなり、いよいよ井上商店に専念しなければという時まで設計事務所の代表は続けていたんですよ。今ではそちらの方は従業員に引き継ぎました」

一級建築士でもあるという井上社長。産廃業全体を、どこか別の視点からも捉えられているのは、こういった経歴が影響しているのかも知れません。また、高鍋商工会議所の会頭を務められるなど、社会貢献にも力を入れられておられるようです。

「従業員にも聞くんですが、会社というものが持続して成長していくのは何故かということです。これはやっぱり、地域社会に生かされていることだと思うんです。地域を大事にしない会社は長続きしないというのが根本にあるもので、役割が回ってきたのならば、有り難くやらせてもらおうかと。会頭をやってみたいと思ったことなんか一度もないんですけどね(笑)」

従業員にも自発的なボランティアを促すためによくこういったお話をされるそうで、毎年5ヶ月間行われる高鍋の花守山の草刈り作業にも、会社として参加されているそうです。その他にも、灯籠祭りやビーチクリーンなどのボランティアなどに長年参加されているとのこと。そんな井上社長が、優良認定を取得しようと思ったきっかけについても伺いました。

「きっかけは取引先ですね。やはり大きな取引先になってくると、相手方から求められるんです。当初はISO14001が大手との取引の最低条件なわけですよ。取らざるを得ないです。求められるからクリアしていくという流れが出来、優良認定も取得しないと企業価値が上がらないというので、積極的に取得したというわけです」

 

思い切って踏み出せば

優良認定取得時に、苦労されたことをお伺いします。

「書類作りは手が掛かりましたが、ISOに比べれば負担は軽かったですよ(笑)よく言われる財務情報の公開ですけど、これには抵抗はなかったですね。もう情報公開は当たり前の時代になってきましたしね。思い切ってやってみれば、なんでもないことだと気付くと思います。寧ろ、公開するほど信頼は得られると思います」

優良認定は取引先に求められてということでしたが、取得後に改めて変わったなと思うことや、これから取得を目指す事業者さんへのメッセージをお伺いしました。

「従業員の意識ですよね。ISOでも毎度審査の度に緊張感は走りますしね。取り組んでいく中で、少しずつでも覚えていくわけです。ちゃんとしなければいけないんだという意識を持つことになりましたね。こういったきっかけになったのは、思わぬメリットになりました。どうやったらクリアできるか、各班で自発的にミーティングをしたりという現象が起こるようになりました。新しく従業員となる人にも、これらが引き継がれ、覚えていくわけです。これから取得を目指す事業者には、思い切って踏み出してみましょうと伝えたいですね。先程も財務公開の件でも言いましたが、財務公開したからといって怒ってくる人なんていないですよ(笑)会社の規模だって、財務公開してなくったって大体わかるじゃないですか。だから、思い切って踏み出せば、自分たちで考えるほど恐れる事はないですよと」

ゼロエミッションとは、廃棄物をリサイクルし、廃棄するものを無くすこと。SDGsにとっても重要な項目です。そうは言っても現代技術ではなかなか難しいこともあるものですと語る井上社長でしたが、物事の根本を多角的な視点で捉え、産廃業、リサイクル業の未来について、ひとつの答えを見出させてくれるようなインタビューでした。